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知っておきたいキーワードVol.1 『ラーケーション』

このコーナーでは、「ひと・まちを元気にする」ことの実現に向けて、知っておきたいキーワードをご紹介します。紹介するキーワードは新旧さまざま。言葉を覚えるのでなく、意義や考え方、も理解し、ビジネスに応用し役立ててください。

働きすぎな日本。
就業時間は年々減少傾向にはあるが・・・

「日本人は働きすぎ」という言葉をニュースなどでもよく耳にします。厚生労働省が2024に発表したデータによると、1988年に比べると20%超の減少したものの(1988年は2,092時間/年。2022年には1,607時間/年)、世界と比較してもまだまだ就業時間が多い国の一つです。労働力は経済発展において重要な要素なので、高度経済成長期はまさしく労働人口の多さが要因だったといえます。

しかし、いくら経済や雇用などによって「まち」が元気になったとしても、また、たくさんの稼ぎが得られたとしても、生活のほとんどを仕事に費やす人生は決して豊かなものとは言えませんし、そもそも「ひと」が元気ではない社会は持続していきません。イノベーションも起きにくくなります。

ラーケーションという休み方

こういう背景もあって、「ワークライフバランス」や「働き方改革」という概念が広まったと推測できます。そして最近では、ラーケーションという制度が広がりつつあります。
ラーケーションとは、『学習(ラーニング)』と『休暇(バケーション)』を組み合わせた造語で、平日に『家族や保護者と一緒に校外学習を行うこと』を目的とした休みを取得できる制度です。学校で学ぶことだけが学習ではなく、いろいろなところに学びの機会が溢れているからです。また、ラーケーションの価値はもう一つあります。それは、例えば旅館の仕事など観光産業に従事する人やシフトで働く人々は土曜や日曜に休むことはほとんどできません。ラーケーションを活用することで、親子で過ごす時間が今よりは増え、ラーケーション制度があると平日に一緒に過ごす時間を増やすことにもつながります。そもそも、子どもの一生の時間のうち、親子が密に過ごすのは小学生時代に半分を費やしている、というデータもあるので、この点もまたラーケーションは良い制度と言えます。

ラーケーションという概念の始まりには諸説ありますが、広まったのは日本旅行業協会(JATA)による「経営フォーラム2024」において、愛知県知事・大村秀章氏が特別講演で話したことがきっかけだと言われています。そして2023年9月3日に愛知県がほかの地域に先立ってラーケーション制度を実施。その後、大分県別府市の「たびスタ休暇」や熊本県の「くまなびの日」など、名称こそ違えど、ラーケーションは全国的に広がっていっています(ラーケーション制度の対象は地域によって違いはありますが、愛知県では公立小・中・高そして特別支援学校の子どもたち)。

広がりつつある一方で課題も・・・
(愛知県のアンケート結果からの推察)

2023年9月の導入から1年以上が経ち、課題も見えてきています。愛知県が実施したアンケートによると、保護者としては「仕事の休みを取ること」がおよそ40%となっています。次に「ラーケーションの届け出ること」がおよそ30%となっています。これらは制度を受ける前提である手続きが面倒ということですが、ラーケーションの浸透が今後広がっていくことでスムーズとなり払拭されるでしょう。

一方でなかなか解決しにくい根深い課題もあります。それは「ラーケーション制度を利用したいができない」というもの。1つは経済的な差によるもの。例えば保護者が会社を休めるとしても「どこかに行くお金がない」のでラーケーション制度を利用できないということ。こういう声が挙がってしまう理由は、ラーケションの定義の中に「校外」と記載しているからでしょう。「校外」は実際には学校以外のことを指しているのですが、「どこかに行く」と誤解されやすいのでしょう。どこかに行かなくても、例えば家の中で図鑑や絵本を読むこともラーケーションです。実際に家の中で過ごした、という人もおよそ12%います。

もう一つは、学校の教職員がラーケーション制度を利用しにくいというもの。教職員のなかで、ラーケーションを利用した人はおよそ10%しかいません。特に担任を持っている教員は、出校している子どもたちがいるのに自分だけ休めない、休みにくいという思いからです。

今後は、誤解なく、正しく伝えていくこと、教職員が休みやすい風土を作っていくことが重要となるでしょう。そのためにも、企業としても、保護者としてもラーケーションも含め、働き方や休み方をより考えていく必要があります。
ぜひ、JIDLカレッジセミナーなどでも話し合いたいテーマです。

まとめ

あなたの住むまちにラーケーション制度があるかないかに関わらず、また、お子さんがいるいないに関わらず、ラーケションの本質を見つめ、あなたができる範囲で行動してみてください。
そして、改めてさまざまな地域に興味を持ち触れてみること、関わってみることでJIDLが大切にする「こころ躍る、からだ喜ぶ」ことにつながっていけたらと思っています。

(取材協力:愛知県義務教育課)